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コラム

【号外】日本学術会議の会員候補の任命を政府が拒んだことについて



大津由紀雄
慶應義塾大学名誉教授・関西大学客員教授

日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命を政府が拒んだことが明らかになり、波紋が広がっています。日本学術会議の問題点をさまざまな視点から指摘する向きもありますし、会員が特別職の国家公務員であることを根拠に、学術会議の推薦どおりに、政府が任命しなければならないということではないという議論も出始めています。

この問題を考えるとき、どうしても外してはならないことがあります。それは「政府はなぜ今回、6人の研究者の任命を拒否したのか」という理由を明示する必要があるということです。これは現在の学術会議が抱えている多様な問題(これは実際、存在します)とは別次元のことです。これはごく単純な話で、もし政府がこの点の説明をしなくてもよいということになると、政府は恣意的に、つまり、勝手気ままに、任命の可否を決めることができるようになってしまうからです。「学問の自由」への侵害の問題はまさにこの点が出発点になります。

同時に注意しておかなくてはならないのは、上の議論は「百歩譲って」の話だという点です。「譲っ」たところの根幹にあるのは首相の任命権に関する解釈の問題です。すでに、広く報道されているように1983年の首相の任命権は「形式的なもの」とした国会答弁と今回の任命拒否はどう考えても法解釈の変更としか映りません。

政府は《法解釈の変更はない》の一点張りでしたが、2020年10月7日23:00掲載の日本経済新聞ネット版の記事にはこんな記述があります。

内閣法制局の木村陽一第1部長は83年当時の内部資料に「推薦に基づいて全員を任命する」との記述があったと明らかにした。この後、加藤勝信官房長官は記者会見で、資料の記述で「法制局が『全員』と申し上げたのは『会員』の読み間違いだった」と訂正した。

ここまでくると、もはやジョークとしか言いようがありません。加藤官房長官がどんな顔でこの訂正をしたのか、見てみたかった。

幸い、研究者、大学、学会など、学問の実践に直接かかわる個人や組織が声を上げだしました。これが大きなうねりとなるよう願うとともに、小さな声ではありますが、わたくしも自分の考えを発信し続けようと考えています。

2020年10月8日記

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